知世に変なスイッチを入れてしまったあの日から、約一週間が経った。
「おはよう麗。はるは?」
「おはよう。忘れ物取りに行った、すぐ来るよ」
知世が玄関で待っているのを見て、そこに向かう。
ローファーを履いて顔を上げると、突然知世の手が私の髪に伸びてきて。
「…っ、え、なに」
「糸くずついてた」
「…あ、ありがとう……」
縮まった距離にドキッと心臓が跳ねてしまう。
い、糸くずか……びっくりした。
「ふ…っ」
「な、何笑ってんの」
「いや?可愛い反応してくれるなって」
「っはあ!?」
知世の顔が近づいたかと思うと私を覗き込んでそう笑って。
ぶわっと身体中が熱くなってしまう。
この前から知世は今まで以上に距離が近くなった。
私が知世のことを兄のような存在だって言ったから……だと思う。
まあ正確には言ってないんだけど、そう思ってたって表情に出てたと思うし。
でもなぜそれが地雷だったのか、考えてもよく分からない。
兄妹じゃないなら、私達はどんな関係なんだろう。