見せかけロマンチック




「な、なに、なんで近づいてくんの」

「麗は俺のことお兄ちゃんとでも思ってんのか?」

「そ、れは、」

「逃げんなよ」


違うの……?私、知世のことお兄ちゃんだと思ってたけど……ダメだった?


頭の中がパニックで何が起きているのかと考えていると、もうこれ以上後ろに下がれないことに気づく。

私が逃げないように、知世は両腕を私の横に置いてきて。

あまりの近さと体勢の恥ずかしさに、かああっと顔が熱くなってしまう。


「あー、俺傷ついたなあ。俺お前の兄じゃねえのに」

「っ、ち、せ…っ?」

「俺が兄じゃないってこと分からせてやる」


なに…?どういう意味なの……っ?
確かに、兄ではないけど……そんなに頑なに否定する?

獲物を捉えたような、感情が読めない瞳をして私を見る知世に、ドクンドクンと心臓が暴れている。

私、変なスイッチ入れちゃった……?


「困り顔も可愛いねうらちゃんは」

「っ、王子様は困ってる子を助けるんでしょ…っ!あんたが私を困らせてどうすんの…っ」

「は?知らねえよ、今の俺王子様じゃねえし」


逃げられずどうにも出来なくて足をバタつかせてそう訴えると、楽しそうに意地悪く笑う知世が私を捉えた。


まるで、逃がさない、とでも言うように。