この容姿だと、声をかけられるなんてよくあることだ。
なんて思うけど、その声の男子達が視界の隅で動き出して少し身構える。
私に近づいてきていることに気づきながらも、気にしていないふりをしていると。
「─────うら!」
そんな、聞き覚えのある心地のいい低い声が後ろから聞こえて。
私も、近くにいる人達も、みんながそっちに目線を向けた。
そこにいたのは、二年生のネクタイの色を身につけた長身の美形男子二人。
私の方に向かって歩く二人は絵になっていて、誰もが私と彼らに釘付けだった。
「…お兄ちゃん!」
そして、私の発した言葉を聞いて周りの人達は一瞬静まり返った。
私はそんな周りの反応を気にもせずに、"うら"と私の名を呼んだ兄────天羽悠(あもう はるか)の元へ駆け寄る。
「スピーチ、リモートで聞いてたよ。すごく良かった」
「本当?嬉しい」
お兄ちゃんが優しく笑って褒めてくれて、私も笑い返す。

