見せかけロマンチック




なんだか気持ちがムズムズして、私は咄嗟に人がいる方に身体を向けた。


「…やっぱり、あっちでお兄ちゃん待つ」

「は?なんでだよ。注目浴びたくねえのに」

「……一生猫かぶってろ、バカ知世」

「はあ?」


ここにいればお互い素でいられるし注目も浴びない。その方が私も楽なはずなのに…!!

なんて思って、一瞬だけ軽く睨むと知世は「ぶは…っ!」と楽しそうに笑った。
その笑顔にギュンッと胸が掴まれたように痛くなって。

っ、やっぱり、素でいると危険だ…!心臓が暴れてる…!!早く人がいる方に避難しなきゃ!!


相手はお兄ちゃんの友達、相手はお兄ちゃんの友達…!!もはや知世もお兄ちゃん…!!
と、心に何度も何度も言い聞かせて胸のざわつきを抑える。


"お兄ちゃんの友達"、"友達の妹"。

見せかけばかりな私達の関係がこの先変わっていくなんて─────少なくともこの時の私は予想していなかった。