それに私も知世も愛想良くニコニコする。
でも、知世は前のように手を振り返したりはしなくなった。
お兄ちゃんはというと聞こえてないふりだ。さすが高嶺の花。
「うらちゃん、また後でね」
「うん」
変わらずお互い猫かぶって分かれて、教室まで向かう。
ふっふっふ。今日は楽しみなことがあるからね。
それは……。
「おはようなず」
「麗おはよう!」
「話、聞かせてくれる?」
お兄ちゃんと遊びに行った話を聞くこと!!!
そう、あの日お兄ちゃんがなずを誘ったらOKが出て。
夏休みの最後、二人で遊びに行っていたのだ。
笑顔を浮かべながら教えろと圧をかける私に、なずは少し顔を赤くして。
「え…何を話せば」
「楽しかった?」
「うん、めっちゃ楽しかった」
嬉しそうにそう言ったなずを撫で回したい衝動に駆られる。
「ねえ、お兄ちゃんってどんな感じなの?」
「え?…えーっと、普通……?」
「…普通?いつも通り?」
「うん。いつも通りめっちゃ優しい」

