「王子ばいばーい!!」
「知世くーん!!」
「あの人が知世先輩?うわっ、がち王子様じゃん」
うわ……やば。大人気じゃん。
知世も私もお互いに話しかける隙がないぐらい、知世に直接話しかける声やひそひそ話が多くて。
知世は笑顔で手を振って「バイバイ」と返しながら、困ったような顔をして私に向き直った。
「ここだと注目されちゃうから、端っこ行こう。あそこだと周りから見えにくいよ」
「そうなの?じゃあそっち行こう」
そう言って知世が指さしたのは玄関前を通り過ぎた方向。
いつもあっちで待ってんのかな。私もこれからそうしよ。
視線と黄色い声が行き交う中、端に向かって二人で歩き出す。
確かにここなら少し暗いから周りに注目されづらい。
完全に見えないわけではないけど、会話も聞こえない距離だから都合がいい。
そう安心して、私はふぅと息をついた。

