見せかけロマンチック




後ろから聞こえた私の名を呼ぶ声に、パッと振り返る。

そこにはセンターで前髪を分けたボブの女の子が、私を見てニコニコ笑っていた。


菊川(きくかわ)なずな。
小学校から一緒の私の一番の親友だ。


「スピーチめっちゃよかったじゃーん!緊張しなかったの?」

「してたよ。分からなかった?」

「ぜんっぜん!堂々としすぎてたよ」

「ふふっ、ならよかった」


驚くなずの言葉に安心したように笑うと、周りの声がまたザワっとした。


「え…?天使……?」

「時止まったかと思った……」

「微笑みやばい……」


そんな言葉が私となずの耳に入って、なずは「あーあ」と言いながら笑った。


「もう有名じゃん麗。さすがだねぇ」

「そうかな…?」


呆れたように、でもどこか楽しそうに言ったなずに、私は困ったように笑った。

そんな私の反応を見たなずは、周りに聞こえないような声の音量で口を開いて。