見せかけロマンチック




リビングのドアをガチャっと開けると、さっきよりもよく声が聞こえて。


「…俺は会社を継ぐ気はありません」

「はぁ…またそれか。真面目に考えているのか?」

「…すみません」

「謝罪が聞きたいわけじゃない」


……会社を継ぐ?

……ああ、そうか。そういうことか。
知世のこの発言で、全てのピースが正確な位置に埋まっていく。

前に職員室の前で会った時、進路のプリントを担任から個人的に渡されていたことも。
テスト勉強した時、『俺進路決めらんないから』って言っていたことも。
必死に勉強し続けていた理由も。

全部、このことだったんだ。


ドアノブに手をかけたまま、呆然としてしまう。

……馬鹿だ。会社継ぐ気はないって言ってるくせに、行動では諦めてるじゃん。

継ぐ気ないのに、あんな発言しないよ。継ぐ気ないのに、あんなに勉強続けないよ。
……継ぐ気ないくせに、それ以外の選択肢はないって諦めてるんだね。