見せかけロマンチック




両親の横を通り過ぎようとした時、お父さんの声にピタッと足を止めた。

握られている知世の手に、ギュッと強く力が籠って。
わずかに震えてるように感じて、胸がズキズキと痛む。


「…麗」

「…っ、うん?」

「ここで待ってて。お願い」


震えた声で言う知世に、優しく返事をする。

お願い、と言う時また手の力が強くなって。

…っ、一人にしないって決めたんだ。
知世を看病した日、一人じゃないって言ったでしょ。

「うん。わかった」と私は言って手を握り返す。

すると、私から手を離して知世はお父さんの方に向き直って。
二人でリビングを出ていってしまった。


知世のお母さんと二人、取り残されてシーンと静まる。


「…お茶、入れるわね」


そう優しく言ってキッチンの方に立ったお母さんに、私も椅子に座った。

お茶を持ってきてくれて、お母さんは私の前に座る。


「お名前は?」

「天羽麗です」

「麗ちゃんっていうのね」