「…ねぇ、急にごめん」
「え?」
「今日メガネ忘れちゃって……黒板になんて書いてあるか教えてくれない?」
隣の席から高すぎず低すぎずの声に話しかけられて、驚いて顔を上げる。
そこには、お兄ちゃんとも知世とも違うタイプの爽やかなイケメンが私を見て申し訳なさそうにしていた。
この人は確か、大槻裕貴(おおつき ゆうき)くん。
さっきの自己紹介でクラスの女の子達に騒がれていた。
「あ、うん。いいよ」
「ありがとう…!」
「えっと、まずはこのプリントを……」
そんな大槻くんに話しかけられて戸惑いながらも、顔に出ないように微笑みかけると、嬉しそうに笑顔を返してきた。
それに少し驚いてしまう。
私の笑顔に動じないどころか倍返しされたんだけど……。
「…目が悪いの?」
「うん。でも普段はメガネかけずに授業中だけかけてるんだ」
「へぇ、そうなんだね」
「えっと、天羽さん…だっけ。昨日新入生代表挨拶やってた?俺その時も目悪くてよく見えなくて」

