見せかけロマンチック




そう言った裕貴くんに、一瞬ピタッと固まって。
私はなんでもないように笑って答えた。

……多分、そういうことなんだろう。
いつかこの日が来ることは分かってた。でも、いざとなると……。

裕貴くんの表情と雰囲気で、なんとなく察してしまう。
それに心がズキッと痛んだ。



────────────────
────────



「なず、先に行ってて」

「え?なにかあるの?」

「うん、呼ばれてて」

「…そっか。待ってようか?」

「ううん。大丈夫」

「わかった。麗のお弁当持ってくよ」

「ありがとう」


時が過ぎるのは早く。
あっという間に昼休みになって、なずにそう言う。

なずはなんとなく察したのか、私のお弁当を持って教室を出て行った。


私は裕貴くんに指定された場所に向かう。
どくんどくん、と心臓の音が大きくなるのがわかる。