私と知世とは違って、お兄ちゃんは紳士だ。
基本的に優しいし、言葉遣いも悪くない。基本的に。
私と知世に挟まれてるから、ひねくれてもおかしくないけど、そんなことはない。
怒ると怖いって、前に知世が言っていたけど。
「お昼ご飯、三人とも家で食べるよね?帰ってから作るから、しばらくかかるけど大丈夫?」
「大丈夫。麗香(れいか)さんいつもありがとう」
「いいのよ、もはや三人兄妹みたいな感覚だから」
お母さんの声に、知世は感謝を告げた。
よく家に来る知世は、夜ご飯前まで滞在することが多い。
そのせいか、お母さんからしても三人でセットという感覚になっているのだろう。
お兄ちゃんと知世は、二人が中学一年生の時に塾で仲良くなった。
この時からよく知世を家に連れてくるようになって、今に至る。
初めて知世が家に来た時のことはよく覚えている。
さっきの学校で見せていたような取り繕った笑顔を見て、当時既に猫をかぶっていた小六の私はすぐに気づいた。

