妖狐少女と御曹司~最強女子は御曹司くんのニセ彼女!?~


「凪季っ……凪季ーっ!」

 私は薄暗くなり始めた廊下を叫びながら走った。

 凪季、一体どこに行ったの?

 私が息を切らしながら校舎の中を走っていると、ひとけのない廊下の向こうから急に黒い影が現れた。

 ドキリ。

 私が身構えていると、そこに現れたのは竜くんだった。

 な、なんだ……。

「竜くん!」

 私は竜くんに声をかけた。

「おう、朱里ちゃん」

 竜くんが右手を上げる。

 だけどその表情は、ちょうど西日で逆光になっていてよく見えない。

 私は竜くん必死でに尋ねた。

「竜くん、凪季見なかった?」

 私が言うと、竜くんはあからさまに嫌そうな顔をした。

「なんだよ、凪季、凪季って。朱里はもうあいつと別れたんだろ?」

「そ、そうだけど、やっぱり心配だもん。なんだか嫌な予感がして――」

 私がそう言った途端、竜くんはグッと私の腕をつかんだ。

 指に力をこめられ、私は小さく声を上げた。

「痛っ……」

「いいじゃん、忘れろよ、あんな奴」

 ぞっとするほど低い声の竜くん。

「竜……くん?」

 私の腕をつかむ手がひんやりと冷たい。

 私はこの時初めて、竜くんの腕にまるで蛇の鱗みたいなあざがあるのに気付いた。

 ゾクリと背中に悪寒が走る。

 私は無意識のうちに、制服越しに肩にある蝶のあざに手をやった。

 これって、もしかして――!?

「あいつらのせいで、俺たちは住み家を奪われた。復讐してやろうぜ」

 竜くんの目が妖しく金色に光る。

 まるで爬虫類みたい。

 それに……『俺たち』って?

「竜くん……もしかして……」

 まさか竜くん、何かに憑かれてるの!?