妖狐少女と御曹司~最強女子は御曹司くんのニセ彼女!?~

 夕暮れの中私は必死で凪季のことを考えないように走った。

 だけど凪季と過ごした日々、たくさんの思い出が、頭の中にキラキラとよみがえって来る。

 家に来た親衛隊の人たちを追い払ってくれた日のこと。

 二人で初めて手をつないだ日のこと。

 二人で見た映画。

 おそろいのキーホルダー。

 短いけど、楽しいことがたくさんあった。

 だけど――もう終わりなんだ。

「うっ……」

 こらえたはずの涙が止まらない。

 ぽろぽろと頬を伝いこぼれおちる。

 もっと一緒にいたかった。

 もっといっぱいお話したかった。

 だけど、もうダメなんだね。

 さようなら。

 さようなら、凪季――。 

 家に帰ってからも、私の涙はおさまらなかった。

 どうしてだろう。

 いつか別れるってわかっていたはずなのに。

 最初から釣り合わない二人だってわかっていたはずなのに。

 どうしてなんだろう?

 こんなに凪季のことばかり考えてしまうのは。

 苦しいよ。

 苦しいよ。

 凪季――。