妖狐少女と御曹司~最強女子は御曹司くんのニセ彼女!?~

「あのさ」

 学校から少し歩いたところで凪季が足を止めた。

「何?」

 凪季は私の目の前で立ち止まると、少し暗い目をして言った。

「実は俺、さっきの話聞いてたんだ」

「さっきの話?」

 ドキリと心臓が鳴る。

 二人の間を、乾いた風がひゅるりと通り抜けた。

 さっきの話って、竜くんと私の話?

 私はコクリとうなずいた。

「う、うん。私、竜くんに力を使うところを見られちゃって――」

「違う、そこじゃない」

 凪季は首を横に振る。

「朱里と俺は本物の恋人じゃない。俺を守るためにニセの恋人になってるって。何であんなこと言ったんだ?」

 少し怒ったような顔の凪季。

「だ、だって、力を使うところを見られたから、本当のことを言うしかないかなって……」

 私がしどろもどろになりながら言うと、凪季の顔が曇る。

「……本当のこと?」

 どうしたんだろう。

 私、何か変なこと言った……?

 私はどうして凪季が怒っているのかさっぱり分からなかった。

 私がとまどっていると、凪季は小さく息を吐いた。

「……そっか。朱里はそう思ってたんだな」

「え?」

 そう思ってたって……どういうこと?

 凪季の言葉の意味が分からない。

 凪季は首を横に振る。

「もういい」

「えっ?」

「それなら、俺たちの契約はこれでおしまいでいい。今まで好きでもない男に無理やり付き合わせて悪かったな」