妖狐少女と御曹司~最強女子は御曹司くんのニセ彼女!?~

 上機嫌な様子で竜くんが帰っていく。

 私があっけにとられながらその様子を見送っていると、後ろから声がかけられた。

「朱里」

 振り向くと、そこにいたのは凪季だった。

「凪季!」

「掃除当番終わったのか? 一緒に帰ろう」

 優しい笑顔で手を伸ばしてくる凪季。

 私はうなずくと、その手をそっと取った。

「うん……」

 凪季が迎えに来てくれて少しホッとする。

 だけど私はさっき竜くんに言われたことが頭から離れなかった。

 どうしよう。

 竜くんにまで私の力を見られていただなんて。

 凪季に相談するべきかな……。

 一瞬そんなことを考えたけど、慌ててその考えを打ち消す。

 ううん。

 ただでさえ命を狙われていて大変なのに、凪季には心配かけたくない。

 竜くんのことは、凪季には秘密にしておかないと。

 私が下を向いて考えていると、凪季が心配そうに私の顔を見つめてくる。

「どうした?」

「う、ううん、大丈夫」

 私は慌ててごまかした。

「何でもないよ。さ、帰ろう」

 私はわざと元気なふりをして凪季の手を引いた。

 だけど凪季は浮かない顔をして下を向く。

 どうしたんだろう?

 いつもはたくさん話してくれるのに、今日はなんだか口数が少ない。