「と、とにかく、今日は無理だから」
帰ろうとする私の手を引き、竜くんは耳元で低くつぶやいた。
「ねえ、二人、本当に付き合ってるの?」
竜くんの目がキラリと光る。
「あ、当たり前じゃん」
私は思わず目をそらした。
竜くんは私の手を強く引っ張った。
「いたっ……!」
「実はさ……俺、見ちゃったんだよね。前に公園で朱里ちゃんが不思議な力を使って蒼木先輩を助けるところ」
竜くんの目があやしくキラリと光る。
「えっ……」
私は言葉に詰まった。
まさか、竜くんに私の力を見られていただなんて。
「そのことは皆には内緒にするからさ、俺には本当のこと教えてよ」
仕方ない。
私は竜くんのしつこさに負け、小さな声で本当のことを話した。
「そ、そうだよ。私たちは本当は付き合ってない。凪季は今誰かに狙われてて、私は凪季を守るボディーガードみたいな感じなの。でもこのことは――」
「分かってる。誰にも内緒なんだよね」
「う、うん」
私はうなずいた。
良かった。
竜くん、このことをみんなには内緒にしてくれるみたい。
「でもよかった」
竜くんは頭の上で手を組み、ボソリとつぶやく。
「え?」
「それなら俺が朱里ちゃんのこと狙っても問題ないよね?」
へっ!?
え……えええっ!?
私が口をぽかんと開けていると、竜くんはお腹を抱え、嬉しそうに笑った。
「ははは、ウソウソ。それじゃ、俺は帰るから。バイバイ! また明日ね~!」


