妖狐少女と御曹司~最強女子は御曹司くんのニセ彼女!?~

「……それと、ボールペンが欲しいなら俺のあげるから」

 凪季は『蒼木学園中等部生徒会』と書かれたボールペンを私の制服の胸ポケットに挿した。

「俺とおそろい」

「あ……ありがとうございます」

 別にボールペンが欲しかったわけじゃないんだけど……。

 でも凪季とおそろいなのは素直にうれしいかも。

 凪季は私の髪を撫でると、そのまま手を私の頬に滑らせた。

 ――ドキン。

 心臓が大きく鳴る。

「……今日、生徒会の仕事があって帰りが遅くなる。だから朱里には一人で帰ってもらうことになるけど、くれぐれも気を付けて」

 私の耳元で低くささやく凪季。

 私はドギマギしながら答えた。

「うん。でも大丈夫? 凪季こそ、また変なのに襲われたら――」

「俺なら大丈夫。車で帰るし、朱里に貰ったお守りのお札もあるし。朱里こそ、暗くならないうちに帰るんだぞ」

 そっか。車で帰るならあの変な妖魔(あやかし)に襲われる可能性も低いだろうし、大丈夫――かな?

「う、うん。分かった」

「よしよし」

 私の頭を何度も撫でる凪季。

 顔がぽうっと熱くなって、ふわふわした気持ちになる。

 そんな風にされると、ますます好きになっちゃうよ……。

 私はぼうっとした気持ちのまま、凪季からもらったボールペンをぎゅっと握りしめて教室に戻った。