「うん。見て見て。ジャーン」
竜くんが見せてくれたのは、タコタコちゃんのついたボールペンだった。
「わあ、可愛い!」
「これ、商店街の福引で当たったんだよね。あ、そうだ。二本あるから一本朱里ちゃんにあげようか?」
「えっ、本当?」
「うん。おそろいー」
ニコニコとボールペンを差し出してくる竜くん。
すると、後ろから白くて大きな手が伸びてきた。
「二本あるなら、これは俺がもらう」
ふりむくと、そこにいたのは凪季だった。
「な、凪季!?」
私はびっくりして立ち上がった。
どうして凪季がここに?
「朱里、今ちょっといい?」
「う、うん。ごめんね、竜くん」
私は凪季に手を握られ、引きずられるようにして教室を出た。
「ここでいいかな」
ひとけのない階段に着き、ようやく凪季は私の手を離した。
「凪季、どうしたの?」
私が首をかしげて凪季を見上げると、凪季はふいと視線をそらした。
「朱里は、あいつと仲良いのか?」
「あいつって、竜くん? 仲良いっていうか……隣の席だからよく話しかけられはするけど」
「それだけか?」
「うん」
私がキョトンとしながら答えると、凪季は私の頭をくしゃりと撫でた。
「……そっか」
凪季、どうしたんだろう……?


