妖狐少女と御曹司~最強女子は御曹司くんのニセ彼女!?~


 流れる雲が太陽をおおい、急に辺りが暗くなる。

 ざわざわと街路樹が揺れる。

 ――ゾクリ。

 その時急に、私は背筋に寒気を感じた。

「寒っ……」

 私が急に体を震わせると、凪季が足を止めた。

「大丈夫? 上着、貸そうか」
 
「ううん、大丈夫です。それより――」

 何だろう。妙な気配がする。
 
 コポコポ。コポコポ。

 嫌な気配とともに、水がわき上がるような音がどこからか聞こえてくる。

 ……これはまさか、妖怪の気配!?

 私は声を低くして言った。

「気を付けてください。ここ――何かいます」

「えっ?」

 わけが分からないという顔の凪季。

 私は公園の中を見渡した。

 けやき並木の奥に小さな沼があるのが見える。

 ……もしかしてこの気配、あそこから!?

「凪季、逃げましょう」

 私は凪季の腕を引っ張り、公園の出口へ向かって走った。

「どうしたんだ、急に」

 わけが分からないという顔をする凪季に、私は必死で訴えた。

「ここは嫌な気配がします。早く逃げないと!」