妖狐少女と御曹司~最強女子は御曹司くんのニセ彼女!?~

 蒼木先輩は、ここ蒼木学園の理事長の孫で、生徒会長。

 おまけに国内有数の大企業、蒼木グループの御曹司。

 勉強も常にトップで、運動神経も良くって、顔もかっこいい。

 ついたあだ名は「国宝級イケメン御曹司」。

 こんな人間がいるんだってびっくりするぐらいの完璧人間なんだ。

 私がじっと蒼木先輩を見つめていると、先輩は無感情な瞳で心菜ちゃんを見下ろした。
 
「あんたがこのクラスの学級委員長?」

 蒼木先輩の声に、心菜ちゃんが飛び上がる。

「は、はいっ」

「先週末に渡した学級アンケート、このクラスだけまだなんだけど」

 蒼木先輩が言うと、心菜ちゃんは震えながらロッカーに向かい、紙の束を蒼木先輩に渡した。

「す、すみません。先日生徒会室に行ったときに、生徒会長がいなかったので……」

「……ふーん」

 蒼木先輩は、心菜ちゃんからアンケートを受け取ると、冷たい目でこう言い放った。

「そういう時は、生徒会室前のポストに入れておけばいいから。次からそうして」

 蒼木先輩の言葉に、生徒会執行部の腕章をした女子たちが騒ぎ立てる。

「そうよそうよ!」
「こんなことで蒼木様の手をわずらわせるだなんて生意気よ!」
「使えない学級委員長ね!」

 三人から攻められた心菜ちゃんは涙目になる。

「す、すみません……」

 しゅんと肩を落とす心菜ちゃん。

 なんだかかわいそう。

 そんなことぐらいであんなに追いつめなくてもいいのに。

「それじゃ、俺はこれで」