妖狐少女と御曹司~最強女子は御曹司くんのニセ彼女!?~

 そ、そうだ。

 何か違うことを話さなきゃ。

 そういえば、今日のお礼、まだ言ってなかったよね。

「あのっ、今日はありがとうございました」

 私は思い切って凪季に頭を下げた。

「……何が?」

 凪季はキョトンとする。

「何がって……えっと、一緒に映画を見たこととか、キーホルダーを取ってもらったこととかっ……」

「それは……俺たち付き合ってるんだし、当然じゃん?」

 あっけらかんとした口調で言う凪季。

「そうですけど――えっと、私、今まで友達と一緒にこうやって出かけたこととかもなくて」

「今までに一度も?」

 凪季に尋ねられ、私はハッとした。

 しまった。話す予定じゃなかったことまで喋っちゃった。

 私は観念して、自分の過去を話し始めた。

「はい。私、小学生の時はこの力のこと気味悪がられてて、『狐憑き』とか『呪われた女』とか呼ばれて――」

 言いながら、小学生の時の記憶が蘇ってきて胸がきゅっと締め付けられる。

「……私、普通じゃないから」

 いつもそう。

 初めのうちは友達が出来ても、私の力のことを知るとすぐ離れてしまう。

 先輩だって、私の本当の姿を知ったら――。