妖狐少女と御曹司~最強女子は御曹司くんのニセ彼女!?~


 私は凪季がなでた頭にそっと手を置いた。

「な……なでなで禁止……ですっ」

 むすっとすねて見せると、凪季はプッと吹き出す。

「なにそれ。可愛い」

 もう……。

 凪季ったら私をからかってばっかり。

 でも――からかわれるのも悪くない……のかな。

 トクントクンと胸が甘く鳴り響く。

 凪季って、思ってたよりずっと優しいし、紳士的だし、近くで見ると本当にかっこいい。

 例えボディーガード目的だとしても、一緒にいられて嬉しいな。

 いつかは、役目を終えたら別れてしまうかもしれないけど……。

 ――ズキリ。

 あれ?

 胸を刺す痛みに、私は戸惑う。

「朱里、どうした?」

 戸惑いが顔に出ていたのか、凪季が心配そうに顔をのぞきこんでくる。

「い、いえっ、ちょっとさっきの映画を思い出しちゃって……」

 私は慌ててごまかした。

 だって言えないよ。

 そんなこと言ったら凪季を困らせちゃう。

 任務が終わっても、凪季と別れたくないだなんて。

 私――凪季のこと好きなのかな?

 私はただのボディーガードで、ニセの彼女なのに。

 私はわき上がってきた自分の気持ちに戸惑ってしまった。