妖狐少女と御曹司~最強女子は御曹司くんのニセ彼女!?~

 先輩はピンクのタコを私にくれた。

「ありがとうございます……! わー可愛いですっ」

 でも水色のほうはどうするのかな?

 私が不思議に思っていると、凪季は自分のかばんに水色のタコをつけた。

「おそろいだな」

 少しはにかんだように笑う凪季。

 うそっ。

 先輩とおそろいだなんて、嬉しすぎるよ……。

 嬉しいような、信じられないような、ふわふわした気持ちになる。

 このタコタコちゃん、大事にしなくちゃ。

 私はキーホルダーを自分のカバンにつけ、ぎゅっとにぎりしめた。

 先輩はそんな私の様子をじっと見つめた後、ふと口を開いた。

「……ていうか、ずっと気になってたんだけど」

「へっ!?」

 気になってた!? 何が!?

 私が身構えていると、先輩は少し息を吐きながらこう言った。

「朱里、俺に敬語使うのそろそろやめたら? 俺たち、付き合ってるんだから」

「は、はい……」

「未だに『凪季』って名前呼びもしないし」

 そっか。すっかり忘れてた。
 
 私、先輩のこと呼び捨てしてる設定だったんだ。

「は、はい、すみません……」

 私が謝ると、先輩はニヤリと意地悪そうな顔で笑った。

「じゃ、試しに今から『凪季』って呼んでみて」

 えっ……ええっ!?

 そ、そんなの恥ずかしすぎるよっ……!

「ほら、早く」

「な……ななな……なぎ……っ」

 私が消え入りそうな小さい声で先輩の名前を呼ぶと、先輩は頬杖をつき、意地悪そうに笑った。

「もう一回」

「…………なぎ」

「よくできました」

 私の頭をなでなでする蒼木先輩……じゃなくて凪季。

 自分でも分かるくらい顔が熱くなる。

 私……からかわれてる?