「初めまして、お父様。いつも朱里さんにお世話になっています」
蒼木先輩が右手を差し出す。
お父さんは蒼木先輩と私の顔を交互に見た後、急に笑顔になった。
「こ、こちらこそ朱里がお世話になって! いやー、まさか蒼木グループの御曹司とうちの朱里が!」
お父さんは私の頭に手を置き、無理やり頭を下げさせる。
「至らない娘ですが、どうぞよろしくお願いします」
私とお父さんが一緒に頭を下げていると、蒼木先輩は笑顔でこう宣言した。
「娘さんのことは、僕が絶対に幸せにします」
いや、幸せにって……まだ中学生なのに大袈裟な!
私があっけに取られていると、蒼木先輩はさらに続けた。
「それと、これもご縁ですから、今後生徒会や会社の打ち合わせでもこのお店を使わせていただきますね」
「ほ、本当ですか!?」
「ええ。料理も美味しいし、値段も手ごろで雰囲気も良いですから」
蒼木先輩が言うと、涼間先輩もうちの料理を誉めちぎる。
「そうだね。僕もここのいなり寿司、美味しいと思うよ」
「ありがとうっ! 二人とも‼」
お父さんが涙目になりながら二人と握手をする。
「もう、やめてよ、お父さん。恥ずかしいからっ……!」
私は無理矢理お父さんを厨房に押し返した。


