うーん。
私はキョロキョロと辺りを見回した。
朝の登校時間だけど、ちょうど今は周りに人の姿はない。
この子も涙でよく前が見えないだろうし……。
よし、決めたっ。
ここは私が……。
「大丈夫、お姉さんが取ってあげる」
私は小学生の頭をポンとなでた。
足に力をこめ、思い切り地面をけり、ジャンプをした。
ふわりと体が浮く。
たぶん他の人が見たら、ジャンプというよりは空を飛んでいるように見えたんじゃないかな。
実は私、妖狐の力を受け継いでいるおかげで他の人よりもジャンプ力が高いの。
ジャンプ力だけじゃない。
力も大人の男の人よりも強いし、足も普通の人よりずっと速い。
その他にも、色々と普通とは違う力があるんだけど、普段は普通の女子に見えるように隠してるんだ。
私は木の上に引っかかっていた帽子を取り、そのままスタッと地面に降り立った。
「はい、どーぞ」
私が帽子を渡すと、小学生は目をゴシゴシこすり、ニコリと笑った。
「ありがとう、おねえちゃん」
「どういたしまして。それじゃあ私、行くね」
笑顔で手を振って別れる。
「……っていけない、遅刻しちゃう!」
私は慌てて学校へと走った。


