妖狐少女と御曹司~最強女子は御曹司くんのニセ彼女!?~

 何だこれは……炎!?

 いったいどうやって出しているんだ!?

「ぐおおおおおおォォ……」

 狐火に包まれた謎の手は、ぼろぼろと白っぽい灰になって崩れ落ちる。

 やがてその灰も風に吹かれて用水路に落ち、完全に消え去ってしまった。

 今の力は……彼女は一体!?

「大丈夫っ、ケガはない!?」

 女の子がくるりと振り返る。

 その瞬間、時が止まるかと思った。

 ――ドキリ。

 心の中で炭酸水の泡がはじけるように、心臓が高鳴る。

 胸を刺す甘い痛み。こんなのは初めてだ。

 俺は動揺する心を隠すように深々と頭を下げた。

「おかげで助かったよ。ありがとう」

「いえいえ、大したことは……」

 女の子は謙遜する。

 どうやらすごく強いのに、控えめな子らしい。

 俺は続けて質問した。

 そうしても彼女のことを知りたかった。

「君、制服からして同じ学校だよね。ネクタイが青だから二年生? もしよければ名前を――」

 だけれども彼女は謙虚に首を横に振る。

「い、いえっ、名乗るほどのものではありませんっ!」