妖狐少女と御曹司~最強女子は御曹司くんのニセ彼女!?~

 私はゴクリとツバを飲みこんだ。

 この大きさじゃ、お札は通じないかも。

 それなら……。

 チラリと男子生徒のほうを見る。

 地面に倒れている男子生徒はピクリとも動かない。

 もしかして、気絶してるのかな?
 
 それなら――。

 ……ふぅ。

 私は小さく息を吐いた。

「もう、しょうがないわね」

 妖狐の本気……少しだけ出しちゃっていいよね? 

 私は指で印を結び、呪文を唱えた。

「――狐火(きつねび)!!」

 私の手から炎が噴き出す。

 これは「狐火」という私の技。

 私の妖力を炎の形にして妖怪や妖魔を焼きつくすんだ。

「ぐおおおおおおォォ……」

 狐火に包まれた謎の手は、ぼろぼろと白っぽい灰になって崩れ落ちる。

 やがてその灰も風に吹かれて用水路に落ち、完全に消え去ってしまった。
 
「ふう」

 私は額の汗をぬぐった。

 ……もう敵はいないよね?

「大丈夫? 怪我はない!?」

 私は男の子のほうへ駆け寄った。

「う……ん……」

 頭を押さえながら身を起こす男子生徒。

 良かった。どうやら意識はあるみたい。

 ――と、男の子が顔を上げた瞬間、私は叫びだしそうになった。

 だって目の前にいたのは、国宝級イケメンにして蒼木グループ御曹司。

 完璧生徒会長の蒼木先輩だったんだから。

 蒼木先輩は深々と頭を下げた。

「おかげで助かったよ。ありがとう」