妖狐少女と御曹司~最強女子は御曹司くんのニセ彼女!?~

 目を閉じると、ぬるりとした蛇の気配を感じる。
 
 それだけじゃない。

 これは――。

 冬の星空みたいに、凛と澄んだ空気。

 凪季の気配だ。

 私は目を見開いた。

 間違いない。凪季が――ここにいる!

「えいっ!」

 私は思い切って足に力を込めた。

 助走をつけ、思い切りジャンプする。

 妖狐の血を引く私には、普通の人間とは違う身体能力が備わってる。
  
 自分の身長よりも高いプールの門を、私は一足で飛び越えた。

 ……スタッ。

 軽やかな音を立て、私は門の中に着地した。

「凪季……凪季ーっ!」

 プールに向かって走りながら、凪季の姿を探す。

「凪季!」

 見ると、夕日の差し込む薄暗いプールサイドに、凪季が倒れている。

 いた!

「凪季、凪季―っ!」

 必死で凪季を助け起こす。

 目は空いていないけれど、胸が呼吸で上下してる。

 良かった、息はある。

 だけど――。

 凪季の周りには薄暗いモヤみたいなのが渦巻いている。