【太陽side】
『あの子』の第一印象は、ケンカ好き、だった。
「南晴(なんせい)月、だよな?」
俺が声をかけると、月はパッと振り返った。
「なんですか」
冷たい瞳で俺を見た。
「俺は月が通ってる学校と対立している学校のトップだ。ルナの召使いとやらは、お前だな?」
「誰ですか‼︎」
「俺は時雨 太陽(しぐれ たいよう)。中3。ルナの女の召使いがいると聞いて、わざわざひとりで見にきてやったまでだ」
月は俺を不審そうに見ると、いきなり拳をぶつけようとしてきた。
俺はさっとかわし、2度目のパンチを片手で止めた。
「俺はケンカする気はないんだ」
「じゃあどうして…」
「俺の部下になる気はないか?」
俺のいきなりの提案に、月は目を見開く。
そして考え込むようにうつむいた。
ルナにまた先をこされた。
今度はお前の女を奪ってやる。
「すみませんが、ルナの友達になるって今日決めたばかりなんです」
断られることはわかっていた。
「じゃあ、俺がここに仲間を連れてきてもいいんだね?それがどういうことかわかる?」
すぐに月の表情がくもった。
そんな月へ最後の一言。
「うーん。1日だけ、とかは?ルナにナイショでさ。明日、こっそり俺たちの学校へ来てよ。ここで朝待ち合わせね!」
「1日だけなら…」
しぶしぶ月がうなずいた。
「よし、決まり!ルナには…」
そのとき、とがった鉛筆が飛んできた。
続けて、何本も飛んでくる。
月は鉛筆をかわし、俺はペシリとたたき落とす。
誰だ、こんないたずらをしたのは?
「月ちゃん、どいてて」
振り返ると、身をひねらせ足をふりあげたのは…