「君〜」
突然、背後から声がした。
「ねぇ、君!」
振り返ると、大地さんがいた。
「なんですか?」
「君、女の子だよね?さっき見たとき、そうかな〜って思ったんだ。しかも、今声高かったし」
やってしまった‼︎ つい、返事をしてしまった…。
私はせきばらいをして、声を低くしようとした。
「いや、違…」
「ごまかさないで」
大地さんはそう言うなり、私のマスクを取った。
「やっぱりそうだ」
大地さんはおもしろいものを見るように目を細めると、
「かわいい」
とつぶやいた。
でも、なんだか目の奥が笑っていない気がする…。
「あのっ、大地さん!私が女ってこと、言わないでください!」
「いいよ。あっ、でも、俺に会ったこと、流星には言わないで」
「わかりました!」
じゃあ、と大地さんが爽やかに去って行った後、ふと違和感を感じた。
流星に会ったときは輝夜先輩って言ってたけど、本人がいないときは呼び捨てなのな…?
私はマスクを付け直す。
しばらくして、流星が戻ってきた。
「ただいま!元担任に、わざわざ挨拶しにきてくれてありがとって言われた!」
「よかったね」
大地さん、どうして流星には言わないでって言ったんだろう…。
大地さんへの不信感が増す。
「どうかした?」
キョトンとした流星に問われ、
「ううん。なんでもないよ!」
とごまかした。
これが後に、大事件を引き起こすこともまだ知らずに__