シュガーくんの秘密のボディーガードちゃん


 うららかな小春日和。天気は快晴。

 桜はだいぶ散ってしまっているが、その代わりなのか道端にはシロツメクサや菜の花が綺麗に咲き誇っている。

 良い天気だなぁ……。

 暖かな日差しが入ってくる3階の教室の窓からは、真新しい制服に身を包んだ新入生の姿が見えた。

 緊張してるのか少しソワソワした初々しい姿に、思わず自分が1年生だった時のことを思い出してしまう。

 私の入学式は曇ってたし、こんなに晴れてるとあの子たちにとっては良い思い出になるよね。

 そんなことを考えて、目を細めていると。 

「遠城寺、さっき佐藤の家にかけたんだが、まだ具合悪いみたいで……。急でもうしわけないが、今日は代理頼むな」

 山内先生が申し訳なさそうに頭を掻きながら、教室に姿を現した。

 現在、時刻は朝の9時半。

 私以外の生徒は全員、先に体育館に移動している。

 ちなみに、私は生徒代表の式辞に関する打ち合わせということで、1人で教室に残っていた。

 入学式は10時から。

 そのため、そろそろ私も体育館に行かないといけない。

「いやいやしょうがないですよ。とりあえず、ちゃんと式辞で読む台本は佐藤くんが、考えてくれてたみたいですし、そこは安心しました」

 別に佐藤くんの体調不良は、山内先生のせいじゃない。

 それは佐藤くんも然り。だって、わざと体調不良になったわけではないのだろうし。

「いや〜。遠城寺が代理で本当に助かるよ。しっかりしてるし、先生も安心して任せられる!それじゃ、そろそろ行こうか。これが式辞の原稿だから落とさないようにな」

 満面の笑みを浮かべた山内先生は、スーツの内ポケットから式辞が書かれた用紙を取り出すと、私にソッと手渡した。

「それじゃもう一回流れを説明するぞ。教務主任の先生が、遠城寺の名前を呼んだら、返事をしてステージに登壇する。そして、この原稿を広げて読む。読み終わったらステージ上の机に原稿を置き、自分の椅子に戻るって言う感じだな」

「……わかりました」

 若干、表情はかたくなっていたかもしれない。
 先生から受け取った原稿を握りしめ、私は真剣な表情で、コクリと大きく頷く。

 正直、ぶっつけ本番なのだから緊張するなという方が無理な話だ。