「実は、俺、小さい頃、詩桜に会ったことあるんだ」
「え……?」
「詩桜は覚えてないだろうけど。つか、あの時の詩桜、俺のこと女子と勘違いしてたと思うし」
クスッと思い出し笑いをする蜜生くんに私は息を呑む。
修学旅行の駄菓子屋で、思い出した記憶。蜜生くんの言葉で疑いが確信にかわった。
「……ミツちゃん?」
小さく名前を呼んでみると、蜜生くんの綺麗な瞳が大きく見開かれる。その表情からは、戸惑いと驚きが入り混じった、なんとも言えない感情が読み取れた。
「気づいてたのか……?」
「ううん、正直に言うと、ミツちゃんのことを思い出したのは修学旅行の駄菓子屋に行った時なの。そこで、ちょっと蜜生くんと似てるなって思ってたんだけど、今、蜜生くんの話を聞いてやっぱりってなった」
フフッと笑顔でそう告げると、蜜生くんはなぜか照れたようにふいっと視線をそらす。
「俺、あの頃は、ハルが話してた研究施設にいたんだ。ハッカーとして活動してたのもその頃。でも、あの日は、ご褒美ってことで日本の駄菓子屋に連れて行ってもらってさ。そこで詩桜と出会って、ちょっとの時間だったけどすっごく楽しくて」
「蜜生くん……」
「だから、ずっと詩桜にまた会いたいって思ってた」
その瞬間、笑った顔が当時のミツちゃんと重なって、私もつられて笑顔になる。
「あ、あと、もう一つ」
「ん?」
「好きだよ、詩桜」
「うん……ん?」
突然の出来事に意表をつかれた私は、ワンテンポ反応が遅れてしまった。



