「2人とも今日は佐藤くん休みで残念だったね〜」
私の前の席に腰掛けた美春ちゃんは、頬杖をついてそんなことを呟いている。
「私達じゃなくて、"美春が"でしょ?」
「えへ?バレた?」
初奈ちゃんの言葉に、可愛らしく首をこてんと傾ける美春ちゃん。
そんな2人のやりとりが1年生の時の頃と変わらなくて、私は思わず、ふふっとほほ笑んだ。
新学期初日ということもあり、ホームルームの後は始業式。そして、明後日の入学式に向けた簡単な説明があった。
入学式当日は、私達、3年生も新入生の案内をしたり、当日の会場設営などクラスごとにお手伝いがある。
「先生が体調不良で欠席って言ってたし、しょうがないよ。でも、新学期初日から風邪なんてかわいそうだね」
私がおもむろにそう口にすると。
「ねー。てか、佐藤くん在校生代表で式辞言うんでしょ?うちの学校、前回の学年末テスト1位の人に式辞やらせるけど、佐藤くんが休みの場合どうなるんだろう?2位の子がやるなら、詩桜やんないとでしょ」
「…うっ」
初奈ちゃんに痛いところをつかれ、私はひくっと笑顔が引きつった。
武道を辞めてからというもの特に力を入れたいこともなかった私は、今後のためにも勉強はそれなりに力を入れて取り組んでいた。
普段は学年5位辺りをウロウロしているのだが、前回の学年末テストは勉強したところのヤマが当たったようで、予想以上に順位がよくまさかの学年2位。
先生にも同じこと言われたんだよね……。
実は、初奈ちゃんの予想通り、先ほど山内先生からコッソリ呼び出された私は、佐藤くんが休みだった場合、代理で式辞をしてくれないか?とお願いされたばかりだった。
「いやあの時のテストは、わりとヤマが当たっただけで……。普段の成績を考えると美春ちゃんの方が適任だと思うんだけど……」
「でも、私、学年末3位だったもーん。2位は詩桜だったんだからしかたないって!」
なんて口では言いつつも、美春ちゃんも内心は、ホッとしてるに違いない。
「てか、転入してきてすぐのテストで1位って……」
「頭も良いのよ〜!すごいよね!てか、絶対、新入生は佐藤くんのビジュの良さにビックリするよ〜」
盛り上がる2人とは対照的に、私は心の中で佐藤くんが当日来ますように……!と祈るばかりだった。



