ハル達の姿が見えなくなった頃、私は緊張が解けたのかその場にへなへなと座り込んでしまう。
「詩桜大丈夫か?」
「うん、ちょっと気が抜けちゃって……。ねぇ、ハルは、今回のことで諦めたのかな?」
「……わからない。ただ、しばらくはおとなしくしてると思うけど」
下を向いて考え込む蜜生くんの表情はやや暗い。
なんだかんだハルのことを気にかけている優しい蜜生くんに、思わず口もとが緩んだ。
「まぁ、今考えてもしょうがない。詩桜、俺達も秘密部屋に戻ろうか。八坂も待ってるだろうし」
「うん、そうだね。じゃあ、今立つ……って、み、蜜生くん!?」
私が声を上げたのとほぼ同時に、ひょいと私を抱き上げる彼に目を見開いた。いわゆるお姫様抱っこの状態にカーッと頬が赤くなる。
「大丈夫。私、歩けるから……」
「ダメ。詩桜は頑張りすぎだから、しばらく休んでて」
有無を言わせず、歩き出した蜜生くん。
急に動き出すものだから、私は落ちないようギュッと彼の腕を掴んだ。
予想以上に逞しい腕と、近い距離にドキドキと私の心臓が早鐘を打つ。
しばらくお互い無言となり、旧校舎内に入った瞬間、コツコツと歩く蜜生くんの足音だけが響いていた。
「……詩桜、俺さ、詩桜にずっと言えなかったことがある」
ふいに蜜生くんが口を開き、私も彼に視線を合わせる。



