徐々に近づいてくるサイレンの音は、やはり学園の方に向かっているようだ。
グランドの方から人のざわつく声が聞こえてきて、そういえばサッカーの試合があっていたことを思い出す。
「まったくいつの間に呼んだんだか……。しょうがないなぁ。今日はここまでだね、行くよ」
ハルがやれやれと肩をすくめ、くるりと踵を返した。
スキンヘッドの男性もコクリと頷き、素直にその指示に従う。
「……待って!ハル、ううん、美春ちゃん!」
「……何?」
ピタッと足を止め、ほんの少し私の方をハルは振り向く。
きっと、もうこの学園で美春ちゃんとして一緒に過ごすことはないだろう。
そう思ったからこそ、最後に彼女に伝えたい言葉があった。
「私は美春ちゃんと過ごした時間、すっごく楽しかったよ!だから、ハルは演じてたって言ってたけど……。全部が嘘だなんて思わないから!!」
「…………」
ハルは何も言わなかった。そこからは足を止めることなく、立ち去って行く。
ただ、振り返った時に見えた彼の表情はほんの少し微笑んでいるように見えた――。



