手足が自由になった私は、はじかれたように外に向かって走り出す。
絶対、蜜生くんを連れて行かせないから……!
そんな気持ちで懸命にハル達の背中を追いかけた。
廊下に出てあたりを見回すと、ちょうど向かいにある1階の廊下を歩くハル達の姿を視界にとらえた。
いた!でも、今、私がいる2階から階段を使ってちゃ間に合わない。
そう思った私は、近くの窓枠に手をかけ、大きくジャンプする。
「……っ」
外にあった大きな木の枝につかまり、くるんと一回転。
自分の身軽さを生かして、彼らが出てくる旧校舎の1階の扉の前に先回りをすることに成功した。
「すご~い!詩桜ちゃんサーカスみたいだ!!」
一部始終を見ていたハルが、パチパチと私に向かって拍手するなか。
「蜜生くんを離して!!」
スキンヘッドの男性が驚いている一瞬の隙をついて、彼をつかんでいる手を引き離す。
「詩桜助かったよ、ありがとう」
ハル達と一定の距離をとり、体制を立て直している私の横で、蜜生くんがお礼を言ってくれた。
「私だって助けられてばっかりじゃないからね。それより、どうする……。2人を捕まえるのはさすがに骨が折れると思うけど……」
視線をハル達に向けたまま、私は蜜生くんに問いかける。
「大丈夫、すでに手は打ってある。言ったろ?俺は俺のやり方で詩桜を守るって」
「え?」と私が聞き返すよりも早く、聞こえてきたのは、けたたましいサイレンの音だった。



