「……俺は正しいことに自分の技術を使いたいと思ってる、だから……」
「へぇ?僕がしていることは正しくないって?僕や君みたいな子どもを大人たちがどう扱ってきたか知ってるのに?」
蜜生くんの言葉を遮ったハルの声がワントーンが低くなる。
「僕は昔から人よりIQが高いってだけで、普通の子どもと同じように生活させてもらえなかった。皆が学校に通っている時間、ずっと研究施設に閉じ込められてやりたくもない計算やら、実験に付き合わされてきたんだ。だから、あんな研究施設はないほうが皆のためなんだよ。君も小さい頃、数年いたからわかるはずだ」
吐き捨てるように言い放ったハルの瞳は、まっすぐに蜜生くんをとらていた。
そして、何か思い出したように目を見開いた蜜生くんに向かって。
「……シュガー、君はいいよね。本当はそのポジションにいるのは僕だったはずなのに」
そう言葉を紡ぐ。
「……ッ」
一瞬、蜜生くんの瞳がゆらゆらと不安げに揺れ、ハルから視線をそらしたのを私は見逃さなかった。
「ちょっと待って!私には正直よくわからないことだらけだけど、大事なのは今の蜜生くんの気持ちだよ。本当にハルに協力したいって心から思ってる……?」
居ても立ってもいられなくてつい問いかけてしまった私に、蜜生くんの肩がピクッと反応する。
「ちょっと詩桜ちゃんは関係ないんだから黙ってて。これは僕とシュガーの問題だから……」
「私は蜜生くんのボディーガードなの!関係なくなんかない!」
まさかこの状況で言い返してくるなんて思わなかったのか、きっぱりと自信満々に言い放った私をハルは、あっけにとられた様子で見つめていた。



