「み、はるちゃん……?」
声がかすれて思うように出てこない。
話し方や声の高さ、雰囲気が今までの美春ちゃんとは違う様子に私はゴクリと息を呑んだ。
「ちょっと気が抜けてたかなぁ?一応、シュガーを仲間にするまでは"花園美春"として接するつもりだったんだけどね。ま、過ぎたこと言ってもしょうがないか。改めまして、僕はハル。よろしくね」
その名前を聞いた瞬間、私はこおりつく。
ハルって……。たしか修学旅行の時にスピーカーで話してた……。
あの時は、ボイスチェンジャーを使っていたから性別も年齢もわからなかった。
でも、まさか蜜生くんを誘拐しようとしていた犯人を裏で操っていた黒幕が、美春ちゃんだったなんて……。
にわかには信じられない状況に、私は頭が真っ白になってしまう。
すると突然、美春ちゃん、いや、ハルはおもむろに自分の髪に手をかけた。
「え……」
パサッと黒髪のカツラが外され、そこから出てきた金髪……いや、綺麗な蜂蜜ブロンドに私は目を見張る。
この色って、蜜生くんの髪色にそっくり。
それに、もしかしてハルって……。
「あなた、男なの?」
「そうだよ。びっくりした?僕、背もそんなに高くないし、わりと女子っぽい顔立ちだから、昔からよく間違われてたんだよね〜。ま、今はそれを利用して暮らしてるんだけど。ほら女子の方が油断してくれることが多いから」
「……っ」
屈託ない笑顔で話す姿が、美春ちゃんと重なってキュッと胸が締め付けられた。
その瞬間、本当に美春ちゃんとハルが同一人物であることを理解する。
「ずっと私のこと騙してたの……?」
「ん〜?騙すって言われるとちょっと違うかなぁ。だって、性別なんかただの記号でしょ?ハルも、花園美春も僕自身なのに変わりないし。まぁ、多少演じてた部分はあるし、驚かせちゃったのは申し訳ないかなって思うけど」
キョトンとした表情で私を見つめる彼の瞳が人形のように生気がないように見えて、ゾクリと寒気がはしる。



