シュガーくんの秘密のボディーガードちゃん


 キーンコーンカーンコーン――。

 始業を告げるチャイムが鳴り響いた瞬間、慌てて自分の席につくクラスメイトたち。

 それと同時にガラッと教室の扉が開き、入ってきた先生の姿にクラス全員の注目が集まった。

「みんな、おはよう。春休みは楽しく過ごせたかな?今年度、3年1組の担任になった山内創(やまうちはじめ)です。1年間よろしくな」

 教壇に立った山内先生は、クラスを見渡しながら元気よく挨拶をしてくれる。

 数学担当の山内先生は、二十代後半。

 野球部の顧問もしており、気さくで明るい性格で、男女共に生徒からの人気も高い先生だ。

 わぁ、山内先生が担任だったら1年間楽しくなりそう。

「それじゃ早速出席をとるぞ〜。初めて同じクラスになる子たちもいるかもしれないから、名前を呼ばれた子は簡単に自己紹介してもらおうかな」

 ニカッと良い笑顔で、唐突にそんなことを言い出す山内先生にクラス内から「えぇ〜!?」と悲鳴に近い声があがる。かくいう私もそのうちの1人。

 新学期の自己紹介ってなんか緊張するんだよね……。

「まぁまぁ、そう言わない。せっかく同じクラスになったんだからまずはお互いのことをよく知るとこから始めよう!先生もみんなのこと早く覚えたいしな。えーっと……それじゃ、まずは出席番号1の青山から」

「は、はいっ。えーっと青山駆流(あおやまかける)です。サッカー部に入ってます、よろしくお願いします」

 先生に指名された青山くんはトップバッターで緊張したように見えたが、爽やかに自己紹介をこなす。

 その後、皆緊張が見られつつも、自己紹介はスムーズに進んでいく。

 そして、だんだんと自分の番が近づき、私の緊張感が高まっていた、そんな時。

「次、佐藤蜜生。ん?佐藤はまだ来てないのか?」

 山内先生の言葉に、順調に進んでいた自己紹介に一瞬、間ができてしまう。

「えー。佐藤くん休みなんだぁ」

「つまんなーい」

 クラス内で、あからさまに残念そうな女子の姿もちらほら目に入ってきたことから、美春ちゃんが言う通り一定数の人気があるみたいだ。

 ふーん?佐藤くん、新学期初日から休みなんだ。

 美春ちゃんがベタ褒めするから、本人を見てみたかったのに。

 教室内で、ひとつだけポツンと空いている席が、妙に目立っていた。

「とりあえず、佐藤については、あとで家に確認するとして自己紹介を続けるぞー。じゃあ、次は篠田」

「は、はい。えーっと篠田です。特技は……」

 佐藤くんの次の篠田くんが、少し肩身が狭そうに立ち上がり、自己紹介を始める。

 結局、最後の自己紹介が終わるまでに、佐藤くんが教室内に姿を現すことはなかった。