たぶん、加藤くんにフラれた小学生の頃から、本当は人を好きになるのに臆病になっていた。
「恋をしたい」と口では言いながらも、心のどこかで私の本当の姿を知らないのに、たとえ付き合ったとしてもうまくいくはずがない……って諦めていたんだと思う。
バカだな私、気づくの遅すぎるでしょ。
蜜生くんから距離をおかれているような気がして悲しかった。
さっき、加藤くんとの間に入って助けてきてくれた時だって本当はすごく嬉しくて心強かった。
それなのに、蜜生くんに弱い部分を見せたくなくて突き放すような言い方をしてしまった自分に腹が立つ。
「詩桜ちゃん、とりあえずここじゃなんだし、あっちのベンチに戻って休もう?」
「……うん」
「じゃあ、私は学校前のコンビニでなにか飲み物買ってくるよ。美春、詩桜のことお願いね」
優しく背中をさすってくれる美春ちゃん、私のために飲み物を買ってきてくれるという初奈ちゃん。
2人の優しさにじんわりと冷えていた手先に熱がもどってくるのを感じる。
周りの人達も始まったばかりのサッカーの試合に注目しているようで、こちらの様子に気づく人もほとんどいなくて、私としてはありがたかった。
「詩桜ちゃん落ち着いた?」
「ありがとう。泣いて少しすっきりしたかも」
美春ちゃんに連れられ、ベンチに腰座る私の隣に彼女もゆっくりと腰をおろす。
ニコリとほほ笑む私とは対照的に、なぜか美春ちゃんは気まずそうに口ごもった。
「あのね……。さっきは初奈ちゃんがいたから言いにくかったんだけど、実は詩桜ちゃんの体調が気になって少し前にこっちの方に様子を見に来てて。見ちゃったんだ。詩桜ちゃんが佐藤くん、香坂綺羅莉ちゃんと話してるところ……」
意を決して、話してくれた美春ちゃんの言葉にに私は小さく目を見開く。
そっか……。聞いてたんだ、美春ちゃん……。



