綺羅莉ちゃんが私に言い放った言葉が、頭から離れない。
『ふふ。これからは遠城寺さんの代わりに、私が蜜生くんのお世話係になっちゃおうかな?』
それってつまり、 綺羅莉ちゃんが蜜生くんの専属お世話係……ううん、新しいボディーガードになるってこと……?
じわじわと広がっていく不安感に押しつぶされそうになった。
さすがに私の考えすぎだよね……。
ピーッ!
遠くで試合が始まるホイッスルが鳴り響いて、ようやく我に返る。
そうだ。私もそろそろ行かないと、初奈ちゃんと美春ちゃんが心配する。
試合が始まるまでには2人のもとに戻ろうと思っていたのにすっかり遅くなってしまった。
ノロノロと重い足取りで、グランドに向かう。
「あ、詩桜戻ってきた……って、さっきより顔色悪いよ!?」
「ほんとだ!詩桜ちゃん大丈夫?」
私が来たことに気づいた初奈ちゃん、美春ちゃんは心配そうに私の顔を覗き込んだ。
「うん、だいじょう……あ、れ?」
「え!?し、詩桜……なんで泣いてるの」
気づけば、ぽろぽろと涙がこぼれ落ちていた。
ギョッとしている2人に申し訳なくて、ぐっと眉間に力を入れるも、溢れる涙をおさえることができない。
加藤くんとのこと、蜜生くんのこと、綺羅莉ちゃんに言われた言葉、いろいろなことが重なって心がキャパオーバーになってしまったみたいだ。
その時、初対面で蜜生くんが言ってくれた「他の奴らがどう思うか知らないけど、俺は強い女子良いと思う」という言葉がふいに思い起こされた。
その後も、蜜生くんと秘密部屋で過ごした放課後の日々、大変なこともあったけれど楽しかった修学旅行時――。
まだ出会って数か月しか経っていないのに、学校では毎日のように顔を合わせていたからか、もう何年もいっしょにいるような不思議な感覚に陥った。
あぁ……。そうか。私、自分が考えていた以上に蜜生くんのボディーガードって役割が大事だったんだ。
いつの間にか、蜜生くんのこと好きになってたんだね……。



