気まずい空気が、私達の間に流れる。
「あ、はは。というか、蜜生くんも練習試合の応援に来てたんだね。青山くんから誘われたんでしょ?せっかくなら、声かけてくれればよかったのに」
そんな空気感にたえられなくなって、とっさにそんな声をかけた時。
「蜜生く~ん、やっと見つけた!置いていくなんてひどいわ。急に飛び出して行っちゃうし……」
パタパタと私と蜜生くんがいる方向へ駆け寄って来たのは、まさかの香坂綺羅莉ちゃんだった。
予想外の人物の登場に私は目を丸くする。
え……?綺羅莉ちゃんがなんで蜜生くんといっしょにいるの?
私の視線に気づいた綺羅莉ちゃんとバチッと、視線が絡んだ。
「あら、偶然〜。遠城寺さんもサッカー部の応援?」
さも、今気づきましたとでも言うような口ぶりの綺羅莉ちゃんは、クスッと意地悪く微笑んでいる。
あいかわらず、私は彼女からはあまりよく思われてないらしい。
「う、うん。同じクラスの青山くんに誘われて、初奈ちゃん達と応援に来たんだ」
どうして2人がいっしょにいるの?
2人ってそんなに仲良かったっけ??
そんないくつもの疑問が頭の中で浮かんではくるのに、いざ声にだして聞く勇気がでなかった。
「あ〜。八坂さん達と?私、今日は蜜生くんに誘われたんだ。ね、蜜生くん」
ふふっと口角をあげ、蜜生くんの腕にしがみつく綺羅莉ちゃん。
わざと見せつけるかのようなその行動についギュッと拳に力が入る。
「……香坂、行くよ」
「え、もう行くの?待ってよ蜜生く~ん!」
グランドの方へと歩き出した蜜生くんは、それ以上は何も言わず、その場を立ち去って行く。
なんで蜜生くん、何も言ってくれないの……?
ショックを受けてその場にかたまってしまう私に向かって。
「ふふ。これからは遠城寺さんの代わりに、私が蜜生くんのお世話係になっちゃおうかな?」
「……っ」
わざわざそれだけ言いに来た綺羅莉ちゃんはクスッと笑みをこぼし、蜜生くんのあとを追って行ってしまった。



