実際に私も空手の大会に出た時、周りの声援が力になったことが何回もあったから応援に来てほしいという青山くんの気持ちはよくわかる。
「ありがとう、詩桜ちゃんが応援してくれたら頑張れるよ」
少し照れたようにお礼を言い、「じゃあまた」と自分の席に戻っていく青山くんの背中を私は笑顔で見送った。
「……」
そんな私と青山くんのやりとりを、少し離れた場所から複雑そうな表情で見ていた人物がいたことに、この時の私は気づいていなかった――。
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土曜日。
グランドには想像以上にたくさんの観客が集まっていた。
ちなみに初奈ちゃんと美春ちゃんに青山くんの練習試合のことを伝えると、2人ともふたつ返事で了承してくれた。
「試合楽しみね」
「うんうん!てか、相手側の選手にイケメンいるかな?」
まぁ、美春ちゃんの場合は、ちょっと目的が違うような気もするけどね……。
「そういえば、今日の練習試合相手ってどこ?」
ふいに初奈ちゃんが私に問いかける。
そういえば今日の相手校については私も詳しく知らなかったと今さらながら気がついた。
「えーっと、たしか隣市の公立中学の……。あ!東野中学だって」
「え、東野中学?」
嘘……。東野って、私がもともと行く予定だった地元の中学校だ。
情報通の美春ちゃんの言葉に、思わずたらりと冷や汗が頬をつたうのを感じた。
もしかして、私が武道をしていたことを知っている小学校の同級生や知り合いが来てるかもしれない。
そんなかすかな不安が脳裏をよぎる。



