――バンッ。
「蜜生くんっ!」
勢いよく扉を蹴破った私は、薄暗い室内で手足を拘束されている蜜生くんの姿を視界にとらえる。
よかった、無事みたい。
大きなケガもなさそうで私はホッと胸をなで下ろした。
すると。
「な、なんだ!?」
ギョッとした様子で私を見つめる犯人らしき中年男性の姿が目に飛び込んできた。
この人が犯人ね!
一瞬で私は男性との距離を詰めた。そして、勢いそのまま男性に対して足払いをしかける。
「……わわっ、ギャッ」
見事に技が決まり、バランスを崩した男性は、軽い悲鳴をあげて床に倒れ込んだ。
「観念しなさい!もう警察には連絡してあるんだからね」
「いったいなんなんだ……!?」
悔しそうに顔を歪ませる男性の腕を用意してきたロープで拘束する。
「何でこの場所がわかったんだ……?絶対にわかるはずないのに」
ブツブツと呟く中年男性は、恨めしそうにギロッと私を睨みつけてきた。
「彼女を睨むのはお門違いだよ仲川教授、残念だけどアンタは俺にハメられてたんだから」
「ハメられた、私が……?」
「そう。俺のいる位置は逐一、スマホアプリで情報共有されてたからね。ここをつきとめるのはわけないってこと」
わざとらしく煽ったような言い方をする蜜生くん。
私はサッと彼に近づき、手足を拘束していたロープをほどく。
「それはあり得ない!私がそんな初歩的なミスをするはずないだろう。そもそも君のスマホは捕まえた時に確認しているが、そんな怪しいアプリはなかったぞ!」
そこまで言い放った男性は、顔を真っ赤にして蜜生くんを怒鳴りつけた。
「気づかなかった?これ、俺が昨日即席で作ったアプリ。追跡アプリってバレないように色々工夫はしてあるんだけど。ほら、普通のゲームみたいだろ?」
自由になった手で、スマホ画面を見せた蜜生くんはニヤリと不適に微笑む。
そう、これが昨日、ホテルで蜜生くんが提案した作戦。
自分を囮にしてわざと犯人に捕まり、その後、蜜生くんが作った追跡アプリを使って、彼を探し出し、私が助けに行くというもの。
もちろん同時並行で、修学旅行の引率がある山内先生は警察への連絡係を。
琴葉さんは、動けない山内先生の代わりに、今いる場所まで私を連れて行くというミッションがそれぞれ課せられていた。



