――ガヤガヤ。
すごい、さすが京都の有名観光スポットだなぁ。
たくさんの人で賑わう鳥居をくぐり抜け、私はキョロキョロと辺りを見回してみる。
私たちがやってきたのは、安井金比羅宮という神社だ。
京都でも縁切り縁結びの神社として知られており、境内には縁切り縁結び碑(いし)なんていうものまであるらしい。
そして、この神社こそ、琴葉さんの雇い主が、蜜生くんを連れてくるよう指定してきた場所でもある。
普通ならもっと人気のないところを選びそうなものだけど……。
そんな考え事をしながら、本殿の方に向かっていると、
「わっ、ちょっと……!」
人の波にのまれて、危なく私は蜜生くんとはぐれてしまいそうになる。
置いていかれないように、慌てて足を踏み出した時。
グイッ。
「へ!?」
急に蜜生くんに手を引かれ、ギュッと力強く握られた。
「み、蜜生くん……!?」
手を繋がれて慌てる私をよそに。
「詩桜、歩くの遅いし、はぐれたら大変だから。それにこうしてればその辺にいる普通のカップルに見えるからカモフラージュにもなるだろ?」
と、涼しい顔の蜜生くん。
たしかにそうかもしれないけど……。
もともと異性に対しての免疫が低い私にとっては、この状況ですでにキャパオーバー。
彼氏だってできたことないし、こんな風に同級生と手を繋ぐなんて初めてだった。
「……ッ」
ドキドキと高鳴る鼓動が、私の手を通して蜜生くんにも伝わってしまうのではないかと心配になる。
しばらく彼に手を引かれ、本殿に向かって歩みを進めていると。
「あらあら、可愛いカップルさんやなぁ」
「ほんまやわ〜。縁結びのお願いごとがしらねぇ」
すれ違いざま、観光客らしきおば様方にほほえましい視線と言葉を送られ、さらに意識してしまう始末だ。



