そして、彼の口から飛び出した予想外の作戦に、私達は仰天してしまった。
だって……。
「やることは簡単。お姉さんが俺を連れてくるように指示された場所にこっちから出向く。いい加減執着されるのも面倒だし、うまく行けば黒幕全員お縄にできるしね」
というものだったから――。
いやいや、そんな危ないことさせられるわけないでしょ!?
「佐藤、お前それ……飛んで火に入るなんとやらってやつだろ!」
もちろん、山内先生も大反対。
だって、下手をしたら本当に誘拐されてしまうかもしれない。
「もちろん入念に作戦は立てていくよ。それに詩桜にもついてきてもらう。山内先生やお姉さんにもサポートしてもらうし」
「……私も危険だと思うけど、あなたのことだから何か勝算があるのね?」
ジッと蜜生くんの瞳を見つめる琴葉さん。
その目はすでに蜜生くんを普通の子どもとして捉えてはいないように見えた。
「まぁね、勝算はある。ただこの作戦、それぞれに役割があるから。3人とも責任重大だけどやってくれる?」
真剣な表情の蜜生くんに私も山内先生も、ぐっと押し黙ってしまう。
「……わかった。そもそも私はあなた達には何かお詫びをしないといけない立場だもの。協力させて」
「佐藤は言っても聞かないからな……。しょうがない」
「まかせて!私にできることなら何でも協力するからね!」
琴葉さんを皮切りに、私と山内先生もそんな彼に応えるように大きく頷いたのだった――。
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「蜜生くん、本当に大丈夫?やっぱり危険なんじゃ……」
キョロキョロと辺りを警戒しながら私は、隣を歩く蜜生くんに声をかける。
修学旅行2日目の朝、私と蜜生くんは2人で京都の街を歩いていた。
「詩桜、動きが怪しすぎるから。普通に観光してる感じで歩いくれないと」
呆れたような視線を投げかける蜜生くんはやれやれと小さく肩を落とす。
「だって、全部が怪しく見えるんだもん。どこから悪い人が来るかわかんないんだよ!?」
逆に、今から危険な場所に向かうと言うのに蜜生くんのほうが楽観的すぎる。
作戦を無事に遂行するためにも念には念を入れ、周りを警戒しないと何のためのボディーガードだろうか。
そう1人で勢い込む私に向かって。
「だからって挙動不審すぎるから……。じゃあさ、とりあえずデートだと思って楽しめば?」
なんて、蜜生くんが軽口を言うものだから私はカッと目を見開く。



