――ガヤガヤ。
さすがに新年度の初登校日。
皆、自分のクラス替えが気になるようで掲示板の前には人集りができている。
「やった!同じクラスだよ〜」
「今年はクラス離れちゃったねぇ……」
色んな声が飛び交い、思い思い盛り上がりを見せる掲示板前。
しかし、そんな中、私はというと…。
……見えない。
人の背中で掲示板が全く見えず途方に暮れていた。
懸命に背伸びをしては見るものの、145センチというクラスで1番低い身長の私には無駄な努力にすぎない。
その隣で頭一つ高い初奈ちゃんが、
「あ!あった、詩桜あった、1組だよ。私も同じ1組だ〜!やったね〜」
パッと瞳を輝かせてテンション高く私の肩をバシバシと叩いてくる。
「え!本当!?わぁ〜。よかったぁ……!」
「ね!今年もよろしく」
キャッキャッと喜び合う私達の横から、突然「ちょっと!」と声をかけられる。聞き覚えのあるかん高い声に、私はおそるおそる視線を向けた。
「あ、綺羅莉ちゃん……」
「ちょっと遠城寺さん、邪魔。確認し終わったならそこどいてくれる?掲示板見えないんだけど」
私の言葉を遮って、文句を言ってくる彼女は香坂綺羅莉ちゃん。
2年生の時、私と初奈ちゃんと同じクラスだった女の子だ。
色素の薄い茶色の綺麗な瞳に、ややツリ目の猫目の彼女は、長い髪を高い位置でツインテールにしている。
クラスでも目立つ女子グループに所属している綺羅莉ちゃんは、男女問わず友達も多いのだが……。
なぜか私のことをあまりよく思っていないらしく、私にだけ当たりが少しキツかった。
やっぱり知らない間に綺羅莉ちゃんに嫌われるようなことしちゃったのかな……。
ツンとした表情で、私の前を通り過ぎていく綺羅莉ちゃんにそんなことを考えて心の中でため息をついた時。
「ふんっ。香坂綺羅莉のやつ、本当、詩桜のこと目の敵にしてるよね。きっと詩桜が自分より可愛いからひがんでんのよ」
あからさまにムッとした表情の初奈ちゃんが文句をこぼす。
「いやいや、そんなことないし。それに邪魔になるような場所にいる私も悪かったから……」
「詩桜ってば優しすぎる!でも、香坂に嫌なことされたらちゃんと私に言ってね?ガツンと言ってあげるから」
真剣な表情で私の目を見つめる初奈ちゃんに私は「何か困ったことがあれば初奈ちゃんに相談するね。ありがとう」と感謝を伝えた。
「うん!じゃ、もうあんなヤツのことは忘れて、早く教室行こうか〜」
私の腕をギュッと掴み、はぐれないように気をつかってくれる初奈ちゃん。
そんな初奈ちゃんに再度笑顔を向け、私は今日から自分たちのクラスになる3年1組の教室に向かった。



