さっきのどういう意味だったんだろう……。
【あのおばさん、怪しい】
たしかに口パクで私にそう伝えた蜜生くんだったが、その後は普段と変わらない様子で皆と話している。
彼の言葉を意識してしまい、ついおばさんの様子を伺ってしまった。
「はい、お嬢ちゃんは全部で326円よ〜」
「あ、ありがとうございます」
ニコッと笑顔で商品を袋に入れてくれたおばさんに声をかけられ、つい声が上ずる。
うーん……。私は全然怪しいと思わないし、普通に良いおばさんだと思うけどなぁ。
でも、蜜生くんが意味のない嘘つかないだろうし……。
蜜生くんなりに何か感じたことがあったのだろうか。
色々気になりつつ、おばさんがいる手前、直接蜜生くんに確認するわけにもいかない。
「皆買えたよね?じゃあ、そろそろ行こうか」
青山くんの言葉に私はようやく肩の荷が下りたような気がした。
この緊張からも解放されるし、とりあえず店を出たら蜜生くんに詳しく話を聞かないと!
そう思って、青山くんの言葉に首を縦に振る私の背後から。
「あら!もう行っちゃうん?皆、せっかく来てくれたからこれジュース!おばちゃんのおごりやから、よかったら飲んでってな」
そんな軽快な口調で、ジュースを見せるおばさんに思わずドキリとしてしまう。
「え〜!いいんですか?ありがとうございます!」
「美春ってば〜。もうっ、すみません。遠慮もせずに……」
美春ちゃんの声が高くなり、それを諌める初奈ちゃんは申し訳なさそうに頭を下げている。
「うふふ。子どもが遠慮なんかせんでええんよ。他の子らも遠慮せんと、さぁさぁ、どうぞ」
奥の冷蔵庫から、よく冷えた人数分の缶ジュースを持ってきてくるおばさん。
手際よくサッと青山くん、篠田くんにも手渡している。
「ありがとうございます」
「おばさん、ありがとう」
素直に2人ともジュースを受け取り、すぐさまプシュッと缶のフタを開けてゴクゴクとジュースを飲み始めた。
「さ、お嬢ちゃんも、べっぴん兄ちゃんもどうぞ」
「は、はい……」
「……どうも」



