「ですよね!おばさんもそう思いますよね〜」
「ほんまに。それに他の子もイケメンでおばさん困ってまうわ〜」
うんうんと大きく頷く美春ちゃんと、盛り上がるおばさんを尻目に、蜜生くんは1人ジッと駄菓子屋の店内を見つめている。
その表情は、懐かしそうな、寂しそうな、何とも言えない、初めて見る蜜生くんの姿が少し気になった。
その後、青山くんの提案で、各々自由に店の中を見て回ろうということになる。
おばさんも「狭い店内やけど、今はお客さんもいないからゆっくり見て回ってええよ」と許可をもらい早速私達は店の中へと足を進めた。
「このガムおいしいかな?」
「ヤバッ!これ幼稚園の時、流行らなかった??懐かしい〜」
青山くんと篠田くん、美春ちゃんと初奈ちゃんが話し合いながら、楽しそうに駄菓子を選んでいる中。
「蜜生くんは何にしたの?」
私は1人で店内を見て回っている蜜生くんに声をかけていた。屈んでいる彼の隣にちょこんと座り込む。
「あぁ、俺はこれにした」
「え、梅味?蜜生くん梅味好きなんだ〜!意外!」
カゴの中に入っていた梅ガムや種無し干し梅を見つめ、私は目をパチパチと瞬かせた。
「そう?おいしいじゃん、梅味。それに、アメリカのお菓子ってめちゃくちゃ甘かったり、しょっぱかったりで、ちょっと苦手なんだよ。こういう素朴な味がなんだかんだ1番うまいし」
「まぁ、たしかに私もアメリカのチョコレートって少し苦手なんだよねぇ……」
以前、父の友人からお土産でもらったハワイのチョコレートを思い出し、私は苦笑いを浮かべる。
独特な風味のチョコレートは、普段日本のチョコレートを食べ慣れてる私からしたら少し苦手な味だったのだ。
「それに私も小さい頃は酸っぱくて苦手だったけど、今は、梅味好きなんだ」
ニコッと蜜生くんに向かって微笑むと、彼は意外そうな表情を浮かべ「へぇ、食べれるようになったんだ」と小さく呟いている。
少し含みのある言い方が引っかかて、私が「ん?」と首をひねった時。
「詩桜〜!佐藤くん、そろそろ決まったら会計するよ。集合時間に間に合わなくなるって」
初奈ちゃんが私と蜜生くんに声をかけてきた。
「はーい!蜜生くん行こうか」
会計へと向かう皆の背中を追おうと、私は素直に立ち上がる。
ギュッ。
その瞬間。
「み、蜜生くん……?」
突然私の手を掴んだ蜜生くんに引き止められてしまった。
戸惑う私を他所に真剣な表情で私を見つめる蜜生くんにドキドキと高鳴る鼓動。
急にどうしちゃったの……!?
内心パニックに陥りながらも「どうしたの?」と声をかけようとした時だった。
彼が口パクで。
【あのおばさん、怪しい】
たしかにそう告げたのだ――。



